学校法人安城学園
『教育にイノベーションを』−安城学園100年の歴史と展望−
第4章 真の地域貢献めざし - 明日を築く教育 #1 (第158話)
公開日 2012/11/14
 社会は大きく変貌し、教育をめぐる環境・条件も大きく舵を変えつつある。
 その一つは高等教育の大衆化―。「少子化進行」「18歳人口減少」「大学氷河時代」という言葉が飛び交ったあと、今「大学全入時代」に突入している。
 文部科学省の学校基本調査によると大学進学率は平成22(2010)年度で50.9%、短期大学を含めると56.6%。この比率はなお増加の見込みだ。一方、大学・短期大学の志願者数に対する入学者数の比率は92.5%で、もうまもなく「大学全入」である。大学は「受験生を選ぶ時代」から「受験生によって選ばれる時代」になった。
 中等教育にあっては、公立高校授業料無償化、公立校での中高一貫教育進行…。幼児教育でも幼稚園・保育所・認定こども園を一体化した「総合こども園」の創設が政策化される。
 これらの事案はすべてこれからの安城学園の運営に深く関わりを持ってくる。
 大学では、学部や学科の再編、カリキュラムの改編、シラバス(教授科目細目)の充実などに取り組む。「大学改革」は存続するための必須の対応になっていく。高校では、“中高一貫教育”の教育トレンドに対して“高大教育連携”“高短教育連携”を強めることで活路を拓(ひら)く。
 幼稚園では、これまで地域で先駆的な存在として堅実、着実な幼児教育を実践してきた伝統に保育分野を加え、育児環境や職員配置、経営能力など新しい制度に的確に対応してことが求められる。幼稚園教諭と保育士などの教職員資格も共通化が図られるとなれば、大学・短期大学における教職課程・教科のあり方にも影響を及ぼすであろう。
 このように、学園にとって今後の運営に大きく関わる変動が迫る中、学園はどんな教育を展開していけばよいのだろうか。
 寺部曉理事長は、中世社会研究を主としたフランスの歴史家、フィリップ・アリエスが『〈子供〉の誕生』(昭和35(1960)年に公刊)で著した史観に基づいて、教育そのものの歴史的な流れから今日の教育のあり方を抉(えぐ)り出す。
 アリエスは、『〈子供〉の誕生』で、子どもと大人の差別を認め学校教育制度を当然視する現代の子供観に疑問符を投げかけた。
 アリエスによれば、中世ヨーロッパには教育という概念も子ども時代という概念もなかった。7〜8歳になれば、徒弟修業に出され大人と同等に扱われた。そうした中、子どもという概念が生まれたのは、17世紀、近代的な学校教育制度が現れたことによる。アリエスは、学校に行って勉強をする―そういう学校制度に基づく教育が子どもという概念を誕生させたとする。
(つづく)
※ 文中敬称略
 
Copyright © 2011-2014 Anjo Gakuen Education Foundation. All rights reserved.