学校法人安城学園
『教育にイノベーションを』−安城学園100年の歴史と展望−
第4章 真の地域貢献めざし - 明日を築く教育 #2 (第159話)
公開日 2012/11/15
 アリエスの思索の綱をとらえて、寺部理事長は考察を進める。
 「そのことは何を表わすかといえば、結局、それは国民国家の成立につながる」と。
 国民国家とは、一つの民族が一つの国家をなすべきだとする考え方で、近代の国家のあり方の典型とされる。その教育は西洋においては市民革命があった後に近代化され、近代国家の成立となった。日本でいえばそれは明治以降のこと。富国強兵、そして殖産興業が伴った。国のためという国民意識を高め持つことが必要となってくる。こうした国民をつくることが国の発展の基礎になる。従って教育を義務化して、国語・歴史を教え、「知育・徳育・体育」を標榜する。
 寺部理事長は、この近代教育制度以前のそれを「教育I」とし、近代教育制度発足以降、第二次世界大戦後の経済高度成長期ごろまでのそれを「教育II」と位置づける。
 そして、国民国家がいわば「福祉国家」として変貌するにつれ、教育は「教育III」の時代に入ったとする。
 「教育II」の時代はある意味で、学校と社会が繋がっていなかったことが指摘される。
 その時代は、意識的に学校と社会とは違うという前提で教育が行われてきた。それがいま、端的にいうと、「学校で習ったことが社会に出て活用されていない」あるいは「学校で優秀な人が社会に出て、どうも活躍していない」といった指摘を生み、「だからもっと社会に役に立つ人材を…」といったニーズになって現れてきている。
 そうなれば、学校自体も従来型の学校教育では疑問視されてくる。一般の産業界は社会の変化に敏感に対応するが、学校もまた、社会の変化に対応することが求められ、教育改革、学校改革が喫緊の課題になってくる。
 そういう中で、公立・私立を問わず各学校が存続するためにも、また存在意義を高めるためにも、いま「教育III」の時代は改革すべき時期であると、寺部理事長は見ているのである。
 「教育III」の時代の改革―。「先見性」と「庶民性」を掲げる安城学園の場合、何を改革の根幹とするか。寺部理事長は「これからは特に東海・愛知県、特に西三河に基盤を置いた教育、西三河地域の中小企業を支える人材の育成が肝要だ」とする。
 そうした意味で、大学が持てるキャンパス、豊田・岡崎では、設置する学部の性格によってそれぞれに教育モデルを構築する。
 豊田キャンパスでは地域社会のデザインをモチーフにした教育で“クオリティ・オブ・ソサエティ”(QOS)を追究し、岡崎キャンパスでは生活のデザインをモチーフにした教育で“クオリティ・オブ・ライフ”(QOL)を追求する形態をとっている。
(つづく)
※ 文中敬称略
 
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