学校法人安城学園
『教育にイノベーションを』−安城学園100年の歴史と展望−
第2章 刻苦の学園づくり - 次なる飛躍 #1 (第80話)
公開日 2012/08/06
家事の実習(大正後期)「ねえ、今度学校が買ったという小堤の土地、見にいかない?」

 裁縫師範科の学生が友に誘いをかけた。
 それに応じて、3、4人が連れ立って、件(くだん)の土地を見に行った。
 朝日町から南西方向に数分ほど歩いたところ、そこには、辺り一帯の水田に囲まれた草ぼうぼうの広い土地があった。目の前には八幡神社と受頭院・浄閑寺といった寺社の境内に生い茂る樹々の森がこんもりと接していた。

「夜になったら、真っ暗で心細く、怖くて外出などはできません」

 さすがのだいも、その辺鄙(へんぴ)さにそんな感想を洩らしたりしたのだが、しかし、生徒たちには、明日の夢を託す希望の土地だった。

「ここに真新しい校舎が建つのね…」

 今の仮住まいの学校生活から決別する喜びの方が大きかった。
 入学者が全国から馳せ参じるこの頃、安城女子職業学校は校舎の不足をかこち、高等小学校の校舎を借りることでなんとか急場をしのいでいた。その校舎も、当初借用して教室に当てていた安城高等女学校が新校舎を竣工して不必要となったのを借りたものだった。
 入学者の中には、狭い校庭に古びた校舎を眺め、これで勉強ができるのだろうかと不安を抱く者もある状態であった。

―この土地ではもう狭い。ここから羽ばたかなければ…。

 こうした状況に、やがてだいは、校舎・施設面で根本的な解決を図ろうとした。
 生徒も一定数確保できる見通しが立ち、学校経営の上でも自信を持つことができるようになった。この機をとらえて、だいは、さらに飛躍するために新天地を求めることを考えたのである。
(つづく)
※ 文中敬称略
 
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