学校法人安城学園
『教育にイノベーションを』−安城学園100年の歴史と展望−
第2章 刻苦の学園づくり - 苦難の女専設立 #3 (第88話)
公開日 2012/08/20
昭和3年に制定された「安城女子専門学校」の校章
安城女子職業学校の校章をあしらった「校友会誌」表紙(昭和3年11月刊)
 昭和3(1928)年6月には、幼児教育の延長のようなかたちで農繁期託児所を設置した。農事教育にもかかわる専門学校教育の前触れ的な取り組みといった意味合いもあった。だが、その収益を少しでも専門学校の設置資金に充当していこうというねらいもあった。
 こうして8月には専門学校設立のための準備がほぼ整い、翌4年春の開校を目指して申請した。

「これでいよいよ愛知県では“2番目の女子専門学校”として誕生することができる…」

 愛知県下での女子専門学校は、名古屋に金城女子専門学校がただ1校存在するに過ぎなかった。
 認可条件をすべて満たし、待望の認可を待つのみ。12月の時点では、翌年4月には専門学校の設立認可がおりる見通しがかなりはっきりして、学生募集の準備、“安城女子専門学校”の校章制作、そして学則を頒布(はんぷ)する準備も着々と進められた。
 校章は“安城女子専門学校”の“安”と“専”をあしらったもの。そのデザインは安城女子職業学校のそれにならったもので、これまで培った安城地域での教育の誇りを表徴していた。
 だが、認可決定も差し迫ってきた4年3月7日、文部省から急電が入った。

「女子専門学校出願の件で相談したいから、来庁されたい」

―何事だろう。

 全く事情の解せないまま、取るものも取りあえず上京した。すると、意外なことを告げられた。

「今回、愛知県から女専設置申請が2校、しかも同種の出願がされている。一校はその母体である高等女学校の生徒数も多いし、法人基本金も15万円を用意しており、その上、名古屋にあるので、許可のおりる可能性が高い。そこで安城の方も、基本金を増して、少なくとも10万円程度にしないと、書類却下の恐れがある。よって至急に法人組織を変更するように…」

 だいは、自分の顔が青ざめるのを感じた。
(つづく)
※ 文中敬称略
 
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