学校法人安城学園
『教育にイノベーションを』−安城学園100年の歴史と展望−
第3章 拡張の道は広く - 新たな息吹 #1 (第100話)
公開日 2012/09/03
安城女子職業学校校舎(昭和 17年) 終戦の詔勅がラジオで流れた8月15日は暑かった。
 翌16日には学徒動員の解除通達があり、勤労動員で軍需工場へ派遣されていた学生・生徒は直ちに学窓に戻ることになった。夏休み期でもあり、9月にかけて長い休暇に入った。
 だいは、生徒の姿のない校地に立っていた。
 国破れて山河在り―、世の中が崩壊していくさまを嘆いて詠んだ杜甫の詩句がいかにも現実感をもって心に響いた。
 名古屋や豊橋などの都市では、空襲のため校舎設備が焼失し、学びの場を失ったところも多かった。それに比べると、軍事目標にならなかった安城は戦災に遭わず、校舎は無事だった。とはいえ、戦争末期の昭和20(1945)年1月13日に襲った三河地震によって、全校舎が半壊の状態になったまま。その復旧を図らねばならなかった。
 しかし、だいはこの後を予想するべくもなかった。
 “敗戦”というかつて経験したことのない事態に直面し、しかも“占領”という局面の中、GHQ(連合国軍最高司令官総司令部)の方針によって社会のあらゆる価値観が180度転換していった。教育もまた根本的に転換され、次々と指令が出されて改革が断行されていく。

―昔から貴重に扱ってきた本も大部分を失ってしまった…。

 学校教育の中心施設として大切にしていた学校図書館は、進駐軍の検閲をうけ、旧来の国策に関係があるとみられる書籍は、「公」の字を記し、すべて焼却処分とされた。
 価値観や教育実態の激変に戸惑う中、だいには、これまでの教育のよりどころが大きく音を立てて崩れ去る思いがあった。
 そうした時期、11月20日、吉報に接した。
(つづく)
※ 文中敬称略
 
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